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日本中の患者を“中医協委員”に(医療介護CBニュース)

【第94回】勝村久司さん(中央社会保険医療協議会委員、連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)

 診療行為ごとの医療費を記載するレセプト並みの明細書をめぐっては、2008年度診療報酬改定でレセプトのオンライン請求を行う病院(400床以上)に対し、患者が希望する場合の発行が義務付けられた。今年1月15日の中医協総会が取りまとめた来年度報酬改定の「現時点の骨子」では、発行を義務付ける医療機関の対象を拡大する方針が示されている。これに対し、05年から中医協委員を務めている勝村久司さんは、全患者への無料発行を断固として主張してきた。4月に任期中最後の報酬改定を迎えるに当たり、実現に向けた思いなどを聞いた。(木下奈緒美)

■全患者への明細書無料発行で真の「中医協改革」を

-政権交代後の中医協での議論をどう見ますか。
 政権が交代する前にイメージしていた議論の進み方と大きくは変わっていません。再診料をどうするか、救急などをいかに手厚くするかが当然、大きな争点になる流れでしたし、実際その通りになっています。確かに何人かの委員の交代によって新鮮になった印象はありますが、個人の発言の内容は変わっても、中医協の基本的な議論の争点や方向性が変わったということはありませんし、変わり得ないと思います。
 診療報酬の総額の増減、すなわち改定率に政権交代の影響が出るか否かが注目されるのは分かります。しかし、5年前にその議論は中医協ではやらないということを決めて、中医協本来の役割の議論を担えたのですから、いまだにその注目が中医協に向く状況は少しおかしいと思います。昨年12月には、診療報酬の改定率などに対する中医協としての意見書を提出しようとして、結局まとまらず見送りになりました。しかし、無理にまとめる必要はなく、中医協は改定率よりも個々の診療報酬単価の価値観を相対的に見直していくことに集中すべきだと思っています。

-勝村さんは当初から、全患者へのレセプト並み明細書の無料発行の義務化を強く訴えています。
 04年の贈収賄事件を機に起こった「中医協改革」では、診療報酬を改定する上で、患者の視点を重視していくことが強く打ち出されました。その後、議論の公開が進み、新たに病院の代表や看護師の代表、わたしのような患者代表も委員に加わりました。また、診療報酬全体の「枠」となる改定率の議論は別の所でやることになったので、中医協では「中身」の議論ができるようになりました。これは国民にとって非常に良かったと思います。なぜなら、「何が本当に大事なのか」を中医協で初めて議論できるようになったからです。
 患者の視点を重視するには、中医協で決めた診療報酬の点数に対して、患者が良しあしを言えることが大事です。そのために、何が何点なのかを患者に示さないといけません。それがレセプト並み明細書です。中医協の患者代表委員を引き受けた時、わたしはまず、全患者への明細書の無料発行義務化の実現が最も大切なことだと感じました。そうすれば、日本中の患者が点数を見て、ものによって「高い」とか「安過ぎる」とか「不健全だ」などと言える。つまり中医協委員と同じような議論ができるようになります。わたしの役割の一つは、日本中の患者が“中医協委員”になれるようにすることなのです。06年度、08年度の改定では実現せず、当時の中医協会長からは段階を踏んで少しずつ進めるよう説得され、今回は委員を務めて3回目の改定になりました。この間、順調に進んできていると思っていますが、もし今回も実現しなければ、「中医協改革」で打ち出した患者視点の重視とは一体何だったのかと言わざるを得なくなります。これが実現して初めて、患者の視点を重視した本当の「中医協改革」が5年をかけてやっとなされたことになるのだと思います。

-実現に当たっては、医療機関が負うコストを問題視する声があります。
 「レセプト並みの詳細な明細書を全員に発行すべき」と言い続けたところ、06年度の改定では、一歩前進ということで、「投薬」「検査」などの小計が記載されただけの領収証の発行が義務化されました。実際に今、全患者に明細書を発行している病院では、この小計領収証を発行するシステムを使って、印刷の様式を変えることで明細書を発行しているところが多いようです。ソフト会社が明細書発行のためにレセプトコンピューターの設定を変えるには、あまりお金も時間も掛からないと聞いています。
 中医協の以前の日本医師会代表委員の方々は、明細書発行のためには、初期にレセコンの費用が掛かると言い続けてきました。診療所でも、小計領収証の発行が義務化された際と同じように、2年に一度、診療報酬改定を受けてソフトを変える際は、対応がしやすいのではないかと思います。ただ、医療機関の規模などによっては、半年くらいの猶予期間は必要かと思います。
 ランニングコストは、患者からの請求があった時だけ発行するよりも、全患者に無料発行する方が抑えることができると、複数の病院の医事課の方から聞いています。例えば仮に10人に1人が請求する場合でも、事前に発行するためのレセコンの設定はしておかなければならず、また、受付・発行業務に人手がかかってしまいます。これらを考慮すると、初めから印刷の設定を変えて全患者に明細書を無料発行する方が、事務の窓口の負担は増えず、必要な人手も全く変わりません。また、全患者に明細書を発行している医療機関では、医療費に関する医事課への質問が減ったとの報告もあります。

-今後の議論はどうなると見ていますか。
 今後は、全患者への明細書無料発行義務化に向けて理解を求めていく必要があります。08年度改定時にも完全には実現しなかったので、今年の改定に向けて中医協・診療報酬改定結果検証部会のテーマに明細書を入れてもらいました。年末の改定に向けた議論の中でも、過去の薬害被害者らの要望書など資料を見せて、委員の皆さんにレクチャーをする時間を少し頂きました。また、12月22日に提出した支払側の意見書にも盛り込みました。それにもかかわらず、今年1月13日の中医協で厚生労働省が示した「2010年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(案)」では、全患者に無料発行するか否かの論点が明記されていませんでした。つまり、今回は全患者に無料発行する条件が整ってきていることが十分理解されておらず、また一歩前進で済ませようということだったのです。厚労省からすれば、ほかの注目されているテーマと比べて優先順位が低く、考える時間が十分になかったのかもしれません。しかし、今や全患者に無料発行しているところはいくらでもあって、何の問題も起こっていません。これ以上待っても同じです。今が実現すべき機会なのです。
 医療側の理解を得る方策としては、例えば全患者に無料発行する医療機関の初診料を少しアップして、「プラスアルファ」が得られるようにする。初期投資で一定の加算を付けて、ある段階で本当に普及したらやめるという方法もあるかもしれません。とにかく「明細書の全患者への無料発行はそもそも当たり前」と思ってもらうことが必要だと思います。
 医療事故・被害をなくすためには明細書の発行が欠かせません。明細書を見れば、誰でも「中医協の議論」に入って行けるようになり、患者は健全な価値観で「高過ぎる」「安過ぎる」という相対的な違和感を世論にしていくでしょうから、結局、救急医療などで一生懸命頑張っている人の応援にも、自然になっていくと思います。

■軽症患者からの特別料金徴収、「効果的でない」

-病院勤務医の負担軽減策として、一定の条件の下で、救急外来を受診する軽症患者から「特別な料金」を徴収することが検討されています。
 目的は理解できますが、手法がよくないため、目的を達成できるどころか、かえって混乱を招くと感じ、この手法には反対しています。腹痛を訴える子どもを連れて行って、大丈夫だと言われて帰ったものの、腸閉塞で死んでしまった子どもの事例だけでも複数聞いています。軽症かどうかの判断をするにしても、安易にすれば医療過誤になるし、かといって「間違いなく軽症だ」と判断するためには、相当の時間がかかることが多いかもしれません。これでは勤務医がますます大変になってしまいます。
 高校を例にすると、定期試験終了前になって、「トイレに行きたい」と言い出す生徒がいたとします。教室で座っているのが退屈だからなのか、保健上の理由なのかの見極めはとても難しく、わがままや自分勝手な言動の生徒でも、その時だけは本当にトイレに行く必要があるかもしれません。変に偏見を持って「我慢しろ」と言ったところ、実は本当に体調が悪かったとすれば、教師としてあってはならないことです。これと同じで、軽症と思って来ているのかそうでないのか、実際に軽症なのかどうかの区別ができないから危険なのです。こうした判断は、人間相手の仕事では非常に難しいと思います。楽になろうとするのではなく、難しいと思い続けて、その中で一生懸命、精いっぱいやることが、人間相手の仕事ではベストなのです。何らかのルールを導入すれば簡単に解決できるのではないかという論理は、生活指導が大変な学校などで既に多くの教訓がありますので、そのあたりから学ぶこともできるでしょう。お金を払わせるというルールを作れば、お金を持っている人でわがままな人は、お金を払うことで堂々と軽症でも優先して受診できることになります。お金持ちであろうとなかろうと、救急の現場では軽症は優先しないと、受付で毅然と対応しようと努力している人にとって、軽症でもお金を払えばよいというルールを作れば、そうした対応が取りにくくなってしまいます。

-基本的な考え方に問題があるということですか。
 いいえ。軽症患者がたくさん来て救急が困っているから何とかしたいという考え方は分かります。この議論は20年以上、救急の現場で言われ続けていることだとも認識しています。もちろん、勤務医の負担軽減に向けた議論はすべきだし、患者への啓発はどんどんしていくべきです。ただ、料金を徴収するのは、患者の行動形態を変えるやり方ですし、その手法は効果的ではありません。そうではなく、例えば深夜や早朝に診療をしている診療所には、これまでの加算以上に、より多くの手当を付ける。また、週1回でも深夜に診療をするなら加算を増やす。こうした手法を取れば、実際の救急外来で働いている勤務医の負担が軽減していくのではないでしょうか。差額ベッドのように、料金を徴収することで個室希望を減らそうというような安易なやり方は、命にかかわる救急では、貧困に苦しむ人が救急の受診抑制をする事態をもたらしかねません。方向性自体が危険だと感じています。


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